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大麻山と金刀比羅宮(讃岐ジオサイト)

ページID:0011187 更新日:2015年1月15日更新 印刷ページ表示

大麻山と金刀比羅宮(讃岐ジオサイト)

善通寺市にあるもう一つのジオサイトとして大麻山が挙げられます。五岳山と同様、長谷川教授に文章を提供いただきました。善通寺市と琴平町をまたぐ山であるため一部琴平町の紹介が入っています。
それでは、この山の地質学的な特徴について紹介します。

タイトルと大麻山写真1

1.象の頭は琴平山か大麻山か 

大麻山(おおさやま)は善通寺市と三豊市の境界をなす標高616mの山で、大麻山から南東に延びる尾根は琴平山(標高524m)へと続いています。山麓には有岡古墳群があり、土器や銅剣,銅鐸,飾玉,経筒などが数多く出土しています。また、大麻山東麓には延喜式にも名を残す大麻神社が鎮座しています。
琴平山の中腹には、こんぴらさんの愛称で親しまれている金刀比羅宮があります。金刀比羅宮の金毘羅大権現は江戸時代には讃岐国象頭山松尾寺金光院に祀られていました。その山号である象頭山は、琴平街道からみると象の頭にみえることに由来し、歌川広重の「讃岐象頭山遠望」には、象の目に当るところに金刀比羅宮が描かれています。歌川広重の錦絵では琴平山が象の頭で大麻山は象の腰になりますが、丸亀平野からみると、大麻山が象の頭で、大麻山北側にある尾根が象の鼻のようにも見えます(上の写真)。

2.地形と地質

大麻山から琴平山は花崗岩を基盤とした1つの独立峰で、標高450m付近から山頂部にかけて中期中新世の讃岐層群に属する讃岐質安山岩(両輝石安山岩)が分布しています(図1)。既往の地質図では、讃岐岩質安山岩と花崗岩との間に凝灰岩が分布するようですが、確認できていません。
丸亀平野から見て、北西斜面の象の鼻のような尾根は、大麻山の北端部が地すべりした跡で(図2)、地すべりによる緩斜面に野田院古墳が築造されています。
金刀比羅宮の本殿は花崗岩の緩斜面上にありますが、奥社は讃岐岩質安山岩からなる急斜面上にあります。このため本宮から奥社までは長い石段を登ることになります。

大麻山図面

図1 大麻山と金刀比羅宮周辺地質図
(基図は国土地理院数値地図25000「岡山及び丸亀」を使用,
地質図は経済企画庁(1969)を参考に作成)

大麻山断面図

図2 琴平山-大麻山東面地質断面図

3.大麻山・金刀比羅宮周辺のジオサイト

(1)野田院古墳

野田院古墳は、3世紀後半につくられた全長44.5mの前方後円墳で、積石塚の積み石には讃岐岩質安山岩が使われています。野田院古墳は宮が尾古墳,王墓山古墳とともに有岡古墳群と呼ばれ、昭和59年には国の史跡に指定されました。現在の古墳は復元工事された平成の積み石です。復元によって文化財としての価値は高まったのでしょうか。

野田院古墳写真

(2)地すべりによる安山岩岩塊

野田院古墳から車道づたいに登ると標高460m付近に、バラバラになった讃岐岩質安山岩岩塊が分布しています。この安山岩岩塊は地すべりによって、山頂部の安山岩溶岩層が滑り落ちたものです。
丸亀平野からみると象の鼻のように見える尾根は地すべりによって形成されたもので、滑落崖直下の平らな面(象の頭)を利用して野田院古墳が築造されました。

地すべりによる安山岩

(3)大麻山園地

大麻山から琴平山にかけての山頂部は、讃岐岩質安山岩から構成されています。大麻山山頂部に整備された大麻山園地には、安山岩の岩塊が点在しています。大麻山の山頂には八重桜が植樹されており、4月下旬から5月上旬に見頃なります。

大麻山園地

大麻山は独立峰では香川県下で1番の高さ(標高616.3m)で、善通寺五岳山や丸亀平野を一望できる展望台となっています。手前の丘陵は地すべりによって2つに分離したように見えます。

丸亀平野

(4)龍王池

 大麻山園地から続く稜線沿いを進むと龍王池があります。中央にある龍王社には「上代噴気孔遺趾 龍王社」(昭和16年)の石碑があります。冬場、龍王池の窪地から地下水による蒸気が上がっていたのかもしれません。

龍王池

(5)奥社(巖魂神社:いづたまじんじゃ)

 金比羅宮の奥社は正式には巖魂神社と呼ばれ、丸亀平野を一望できる高所にあります。西側の天狗の面がある岩壁は、柱状節理の発達した讃岐岩質安山岩からできています。柱状節理はほぼ垂直なので、マグマの冷却面はほぼ水平と推定され、讃岐岩質安山岩の溶岩流が水平に流れて冷却したと推定されます。

奥社写真

(6)金刀比羅宮(ことひらぐう)

 琴平山中腹にある金刀比羅宮はマサ化した花崗岩上からなる緩斜面に建立されています。本宮北側の展望台からは丸亀平野を一望することができます。

マサ化した花崗岩写真
マサ化した花崗岩写真

金刀比羅宮から見える丸亀平野の眺望
金刀比羅宮から見える丸亀平野の眺望

(7)葵の瀧

 大麻山山頂から南に下ると安山岩分布域の縁辺部にあたる遷急線に葵の瀧があります。葵の瀧は、板状節理の発達した讃岐岩質安山岩からなる落差15mの滝です。板状節理が緩やかに北へ傾斜していることから、讃岐岩質安山岩溶岩流がほぼ水平に流れたと推定されます。この滝は金刀比羅宮の水源になっているとのことです1)。

葵の滝

(8)大麻神社

 大麻神社は、今から1900年あまり前、忌部(いんべ)氏が付近を開拓して麻を植え、祖先神を祀ったのが始まりだと伝えられています。延喜式(えんぎしき)にも名を残す古い神社で、境内には天霧石によく似た火山礫凝灰岩製の石造物があります。

火山礫凝灰岩製の石造物
火山礫凝灰岩製の石造物

天霧石によく似た火山礫凝灰岩
天霧石によく似た火山礫凝灰岩

参考文献:

1)善通寺市ホームページ:
2)ウィキペディア「金毘羅権現」:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E6%AF%98%E7%BE%85%E6%A8%A9%E7%8F%Be
3)歌川広重・筆 六十余州名所図会
4)経済企画庁:土地分類基本調査丸亀「表層地質図」,1969.
5)長谷川修一,斉藤実:讃岐平野の生いたち-第一瀬戸内累層群以降を中心に-,アーバンクボタNo.28, pp.52-59,1989.
6)大麻神社内:社殿由緒略記

讃岐ジオサイト探訪・大麻山ジオサイト [PDFファイル/6.57MB]

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